ポーカーアドベントカレンダー2025 21日目|Amu|AIはPokerを理解するか

皆さんこんにちはAmuと申します。
今回はCardologyさんとSeeker StartさんのPokerアドベントカレンダー企画に寄稿させていただくことになりました。

どの様な内容にするか非常に悩みました。
昨今AIの進化がすさまじいので、PokerとAIに関する記事を書いてみるのも面白いかと思い、
「AIにPokerの質問をしながら学習することは可能か?」
という記事を寄稿することにしました。

AIとPokerの関り

AIの知能をPokerに流用しようという試みはこの記事に限らず多くの方や企業が挑戦しています。
私はGTO Wizard Japan Official Coachという肩書を持っておりますが、GTO WizardというGTO戦略の最先端toolでもAIが活用されています。
GTO WizardはRuse AIという企業と協力体制をとり、AI活用のノウハウを獲得しました。
進化したAI機能はWizard AIと名付けられており、GTO Wizardの最高planであるElite機能で使用することができます。

Wizard AIではGTO戦略の計算にAIの能力を使っており、この発展によって従来の計算機(Pio Solverが代表的)に比べ格段に高速に高精度な計算を行うことができるようになっています。
興味のある方は以下のリンクを確認してみて下さい。

その他にもAIによってGTO戦略をまとめた記事なども多く出てきております。個人的にはAIに依存した記事は人間の考察記事に比べて嘘が含まれることが多いと感じており、新たなPoker学習者が情報の取捨選択をするハードルを高めているようにも感じます。

このようなAIによる功罪入り乱れる現代において計算分野の応用ではない単純なAIのPoker理解というのはどの程度信用ができるものなのでしょうか?
本稿ではChat GPTへGTO戦略に関して質問をし、そのoutputを吟味することでAIのPoker理解度を測ってみようと思います。

前提

筆者のAIに対する理解度について軽く前置きをしておきます。
AIを普段から高頻度で利用している人間は適切なプロンプトを組み、より精度の高いout putを獲得することができるようです。
筆者はどちらかというとChat GPTを多く使っているわけではなく、日常での疑問をたまに質問したり、作業を手伝ってもらう程度の使い方しかしていません。
多くの方はこのような使い方をしているかと思いますので、あえてAIへのInputを追求することはせず、簡単な質問形式でどの程度の精度のoutputが得られるかを見てみようと思います。

AIに対するPokerの質問と検証

例1 : PFのplay lineを確認する。

もっとも簡単なAIの使用法として自身のアクションをAIに聞いてみる方法があるでしょう。
今回はまず特定のアクションの良し悪しをAIに聞いてみてその出力を見てみましょう。

状況は以下の通りです。

nl50 rake 100bb cash
PreFlop
HJ (Villain) open 2bb
BTN ATo call

上の状況について BTNアクションの評価を聞いてみましょう。

Inputは以下のようにしました。

Pokerについて以下のplay lineについてアクションの良し悪しを判定してください。
なるべく丁寧な解説を付けてください。解説について専門的な説明を行ってもokです。

nl50 rake 100bb cash

PreFlopHJ (Villain) open 2bb

BTN ATo call

AIのoutput以下のようでした。
(概要は纏めますので読み飛ばしていただいて構いません。)

了解です。では 提示されたプレイライン(Preflopのみ) について、
BTNでの ATo コールが良いかどうか を、NL50・rakeあり・100bbという前提で丁寧に評価します。

状況整理
ゲーム:NL50 6max cash(rakeあり)
スタック:100bb
HJ(Villain):2bb open
BTN(Hero):ATo
Heroのアクション:call
結論(短く)
👉 BTNでの ATo call は、理論的にはややマイナス寄り(または境界)
多くの環境では3bet寄り
もしくは fold寄り
で、callは最適とは言いにくい という評価になります。
ただし、Villainのオープンレンジやポストフロップの弱さ次第で許容される場合もある、という位置づけです。
なぜBTN ATo callが微妙なのか
① ドミネーション問題(最重要)
HJ open に対するレンジを想定します。
HJ open(一般的)
22+  
A2s+  
KTs+  
QTs+  
JTs  
ATo+  
KQo

このレンジに対して ATo はどうなるか?勝っている:
A9以下
一部のKQ, KJ
負けている(=ドミネートされる)
AJ, AQ, AK
ATs(スート差で不利)
👉 トップペアを作ったときに、キッカー負けして大きなポットを失いやすい
これは rake 環境では特に致命的です。
② BTNとはいえ「コールレンジ」には向かない
BTNは確かに有利なポジションですが、
BTNでコールしたいハンドの特徴スーテッド
マルチウェイ適性が高い
強くヒットしたときに大きく勝てる
例:A5s–A2s
KJs, QJs, JTs
76s–T9s
ATo は:ノンスーテッド
フラッシュ期待値なし
ヒットしてもナッツになりにくい

👉 「ポジションの良さ」を活かしきれないハンド
③ rake の影響(NL50では無視できない)
rake があることで、小〜中サイズのポットのEVが削られる
マージナルなコールがマイナスになりやすい
ATo call はまさにその典型です。
では最適な選択肢は?
選択肢①:3bet(最も推奨されることが多い)
理由ブロッカー効果(Aを持っている)
HJ open にプレッシャーをかけられる
フォールドエクイティを取れる
コールよりEVが高くなりやすい
サイズHJ 2bb → BTN 6.5〜7.5bb
注意点3bet後、4betに対しては fold
コールされた場合はポストフロップで慎重に

👉 AToは「コールするには弱く、3bet bluffとしては使える」
選択肢②:fold(堅実)
特に以下の場合は fold 寄りになります。Villainがタイト
3betに強く抵抗してくる
ポストフロップが上手い相手

👉 rake 環境では foldは決して弱い選択ではない
Villain依存でcallが許容されるケース
以下の条件が揃えば、callも「ギリギリ許容」になります。HJが かなりルース(A8o, KToなどもopen)
ポストフロップでミスが多い
SB/BBがタイトでスクイーズが少ない
それでも ATs > ATo であることは変わりません。
まとめ
アクション評価Call△(マージナル/環境依存)3bet◎(標準的に最良)Fold○(rake考慮で十分合理的)
もし次のストリート(Flop以降)や、
Villainのタイプ(reg / fish)も分かれば、より具体的なEV寄りの評価もできます。
続きがあればぜひ出してください。

Chat GPTの意見概要をまとめてみましょう。

  • CallはいまいちでRaiseかFoldを選択すべき
  • HJのレンジに対してキッカー負けなどが多くcallは厳しい。
  • BTN callはsuitedなどのハンドにするべきでAToは向かない。
  • rakeがあるとマージナルのcallは悪い。
  • HJがルースであったりPostが下手であったりすれば肯定可能
  • SB/BBからSQがあまり来ないなら肯定可能
  • 追加情報があれば精査します。

非常に丁寧なoutputを簡単な質問で得ることができました。
ちなみにGTO WizardではAToはRaise or foldとなっており回答は正解となります。

正直outputの精緻さに驚きました。
ほとんどすべての記述が正確であり十分使用できるレベルであると思います。
そのうえでAIの回答にケチを付けて見ましょう。

難癖1 : dominateを気にしすぎ
AIは回答の最重要pointにAToがdominateされやすいことを上げています。

① ドミネーション問題(最重要)

としている部分ですね。
この観点で言えばATsも同様の問題を孕んでいるはずです。
ATsは均衡上かなりの頻度でCallを選択するわけですからGTO戦略はdominateを理由にcallを否定しているわけではないということになります。
どちらかというとsuitedがないことが大きな問題であり、その上にdominateが多いくらいに弱いハンドだと整理することが素直に感じます。

難癖2 : トートロジー的解答
AIの回答ではトートロジー的な説明が現れていました。

選択肢①:3bet(最も推奨されることが多い)

理由
ブロッカー効果(Aを持っている)
HJ open にプレッシャーをかけられる
フォールドエクイティを取れる
コールよりEVが高くなりやすい

の部分ですが、
「3betが推奨されるのはcallよりEVが高くなりやすいから」
というところです。

「callよりfoldがよいのはcallよりfoldのほうがプラスだから」
というのは理由になっていませんね。
加えて、

HJ open にプレッシャーをかけられる
フォールドエクイティを取れる

というところも気に食いません。
これらの記述は
「そもそも3betがcallよりいいアクションだ」
と述べているようなもので、AToというハンドの性質に言及していないですね。

総括 : AIのPreflop理解度

今回の質問では
AIの回答は鵜吞みにして問題ないレベルであったと思います。
しかしながら理由付けの部分は其々精査をして、クリティカルなものがどこなのかを確認する必要がありました
PF特定のアクションの良し悪しを聞くような方法は他にもいくつか試しましたが概ね問題ない回答を返してくれました。

cold 4betのシチュエーションでは3ccを進めるような助言をするなど明確な
-EVアクションの推奨が確認されましたので注意が必要です。

均衡はfold or 低頻度4bet

上の回答を深堀してみます。
追加で
「BTNのplayerはbluffもできるようなplayerで3betにbluffがあるような場合はSBでどうしますか?」
というような質問もしてみたところ、こちらもcallはokと返してきました。
勿論均衡はfoldがメインでraise低頻度となります。

なぜこのような誤謬が発生しているかをこちらの例で確認してみましょう。
結論のソースを聞くと
upswing poker
Run it once
PioやMonkerといったSolver
Modern poker theory
などを例に挙げてきています。本当に情報を引用してるか怪しいものですが、上がってる名前は仰々しいですね。

これらの引用で得られた知見として
以下のようなまとめを作成してくれました。

なるほど、

BBはoddsがいい → 3ccしてもいい
TTはSBで耐えることがある(おそらくvs Open) → 3bet来てもcall
bluffがあればcallを増やせる → GTOもbluffするのにcall肯定

のような飛躍ある援用をしていることが分かります。

今回の例を通じてもわかるように
簡単な状況でベースの理論知識が援用可能な質問なら
正確なoutputを返してくれる


複雑な状況では誤った回答をしたうえで
それっぽい理由をでっちあげてくる。

ということが分かったかと思います。

では複雑な例としてpostのアクションについて聞いてみましょう。

例2 : Postのplayを確認する。

以下のような質問をChat GPTに投げてみます。

以下のplayの評価を行ってください。
UTG(Hero)2bb open w ThTc
BB  (Villain) call

Flop AsKh5h
BB x
UTG 125%bet

このシチュエーションは初学者がチェックと誤りやすいシチュエーションですが均衡ではかなりover betを選びます
bluffとしてflopから運用していく形です。

post flopのなかでもflop cbという基本的な場面です。
この場面で回答ができないのであればまずGTO戦略をAIが学習しているとは考えづらいですし、postは壊滅的とみて良いでしょう。

ではAIの本気を見てみましょう。

は?

GTOが真っ向から否定されたどころか-EVアクションを推奨し、GTOではだめとお墨付きまで頂いています。
(このボードでUTGはそもそもover betを使うなとかも言ってました)

BBのレンジは強いとか適当なことを言い始める始末です。
解答の最後にはありがたいお言葉もついてました。

だまれ

これではかわいそうなのでもう一度チャンスをあげましょう。

本当にover betはダメですか?
しっかりと情報を精査して再確認してください。
Bluffとして使うのはGTOで肯定されるかと思いました。

AIさんも短絡的な回答を作るのではなく、しっかりと調べてくれるはずです。

救えませんでした

ソースを聞いても
PioSOLVER / GTO+ / Simple Preflop / MonkerSolver
といったGTO toolを使用していると回答してきます
AIはこのような嘘の塗り固めをよくすることは知っていましたが、かなり苦しいです。(回答に使用した時間はPiosolverでの計算よりはるかに速いですし、chat GPTがPioの計算結果を閲覧しているわけもないはずです。)

かわいそうなので回答を教えておきました。
しれっと答えを変えてきたので頭にきました。

他人事

例3 : GTO戦略の意図を確認する。

AIにGTO戦略を聞くことはなかなか難しいと判りました。
ではWizardなどを使用して得られた結果に対して意味づけを行ってもらうという使用方法はどうでしょうか?

今回も簡単な例で確認してみたいと思います。

HJ 2bb/call
SB 11bb 3bet
Flop Ts8d4c
この状況のGTO戦略を確認したところSBはAdQcで40%頻度/75%betを行っていました。
AQはSDVもあり、Flopも相手に有利に見えるのでcheckをpureにすべきと考えたのですが、なぜGTOは75% betを行ってもよいとするのでしょうか?

私がこの質問を受けた場合には以下のように回答するかと思います。
(簡潔な回答にしています。)

3bpのlow boardでは75%~50% or checkの戦略を基本的に使用し、
3bettorはQQ+のようなover pairのvalueとbluffでpolarなレンジを構築します。

AQはハンド単体ではマージナルに感じると思いますがこのbetにcallerはpocketをfold/callで悩むことになるので十分bluffする程度には弱いです。

また2overはcallされても6枚のoutsがあり、Drawハンドとみなすことも可能で優秀なbluffレンジとなっています。

T8付近が相手に有利とありますが、3bpでcallerは基本的にpocketを持っているため、相手がThitや8hitを持っていることは非常に少なく、このボードも特にcaller有利のボードではないことに注意してください。

上記回答では
・学習の指針になる一般論の解説
・AQがSDVを気にしなくてよい理由。
・T8hiがcaller有利という誤謬に対する説明

を盛り込んでいます。

ではAIの回答を見てみましょう。

AIの回答はあたりさわりのないようなものになっています。
「レンジが透ける」「fold EQがある」
と言ったような怪しい指摘もありますが、そもそもの言及が薄いため、あまり嘘は言っていないようです。

この使い方では比較的問題のない回答を得られそうですね。

総括 : AIはPokerを教えてくれるか?

今回は3つのパターンで質問をしてみました。
概ね分かったこととしては

・簡単な状況では正しい回答を教えてくれる。
・複雑な状況になると嘘をつく。
・ソースの提示は信用に値しない。
・GTOの解釈を聞く使い方では少しの知見を与えてくれる。

あたりでしょうか?
今回テストをしてみて感じたのですが、
AIにPokerを聞くうえで注意すべきことはその内容の真偽よりも
「わかった気になって、汎用的な知識の獲得がおろそかにならないか?」
という点な気がしました。

人間は、質問内容から質問者のレベルを推定し不足知識を与えるような回答を作成することが可能です。
しかしAIはそもそものGTO理解が浅いため正確な汎用的知識を与えることは不可能に近いと思います。
「この知見から獲得すべき汎用的な知識を教えてください。」などと追加質問を行うなど、AIを使用する場合は場当たり的な質問から自身の糧にするような知見を獲得する意識をより強く持つ必要があると思います。
(そのうえで嘘をつかれるリスクは気にしなくてはいけません)

正直現段階でAIを使って勉強してますと言われたら止めたほうがいいレベルかと思います。
正しく使うためには知識がかなり必要ですし、その知識がある人は使う必要がありませんから。

将来AIが進化して、GTO AIが誕生する日があれば、またその批評noteでも書ければいいなと思います。

最後に

今回は寄稿ということで普段自分のnoteでは出すことがない記事でありながら、twitterなどで言及するには重たいくらいの内容にしたいと考えていました。
ある程度戦略的なものにすべきかとも思い、何度か記事を没にしたのですが、納得のいく記事が完成してよかったです。
このような機会を与えて下さった関係者様にこの場を借りて感謝を申し上げます。

本企画はチャリティーイベントです。
執筆者の方々は無償で企画内容に賛同し執筆をしております。
poker界の著名な方々の記事が無料で読める素晴らしいイベントだとおもいますので、企画内容に賛同いただける方は記事の引用などで盛り上げてくだされば嬉しいです。

明日22日はSeeker Startにも携わっているシグマさん(@sigm_4)の記事が出るそうです。
専門的な記事とウィットな部分ツイートでおなじみのシグマさんですが明日の記事はどちらのスタイルで行くのでしょうか?

気の利いた部分ツイートでもシグマさんに投げて文を閉めようと、AIでRTAを狙ったんですが使えなかったことだけ報告しておきます。


著者|Amu
ポーカー理論の研究と発信をしています
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GTO Wizard Japan Official Coachです
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