ポーカーアドベントカレンダー2025 19日目|Senjyu|「すべてのポーカーに、白熱を。」は、どのように生まれたのか。

JOPT(Japan Open Poker Tour)
ポーカーを愛する人ならば、その名を知らない人はいないでしょう。
開催するたびに来場者数3万人を超える、名実ともに日本最高峰のポーカーイベントです。

そんなJOPTが掲げているタグライン(価値規定の言葉)をご存知でしょうか。

「すべてのポーカーに、白熱を。」

私はこの言葉の生みの親として、JOPTのクリエイティブディレクターを担当しています。

JOPT ドキュメンタリームービー「JOPT : 白熱の舞台裏」より

なぜこの言葉に定まったのか。
そもそも「タグライン」とはどのようにして生まれるのか。
今回はポーカープレイヤーとしてではなく、コピーライターとして、
「すべてのポーカーに、白熱を。」が世に出るまでのプロセスと、その裏にあった苦悩をご紹介したいと思います。

本記事は、「ポーカーアドベントカレンダー2025」への寄稿記事です。
「ポーカー界で広くつながりのあるイベントをつくり、日本のポーカープレイヤーにとって楽しみな恒例のお祭りにしたい」というしぐまさん、Cardologyさんの想いに賛同し、ご協力させて頂くことにしました。

目次

自己紹介

長竹慶祥(ナガタケ ヨシアキ)と申します。
ポーカー界隈では「Senjyu(センジュ)」という名前で活動しており、歴は8年ほどになります。ポーカーを始めたきっかけは、世界のヨコサワがまだYouTuberになる前、「横澤真人」だった頃に彼と知り合ったこと。「ここがBTNと言って……」という基礎の基礎から教えてもらっていました。

辛辣すぎない?

普段は広告会社のコピーライター・クリエイティブディレクターをしています。商品のキャッチコピーやCMの企画、企業のタグライン開発など、「言葉」でクライアントのさまざまな課題を解決する仕事です。

JOPTのプロジェクトに参加することになったきっかけは、日本最高峰のWEB制作会社「mount」のイムさんからのお誘いでした。

怖すぎ。

クリエイティブ業務に携わる人でmountを知らない人はまずいません。
国内外のアワードを多数獲っており、「このサイトどうなってるんだ!?」と驚くようなWebサイトは大抵mountが作っていると言っても過言ではないスーパークリエイティブカンパニーです。

KOKUYO Curiosity is Life
Daimaru Matsuzakaya Hyakuyozu
WRITING & DESIGN

そんなイムさんから、「JOPTブランドの骨格を1からつくりあげたい。言葉がとにかく重要だからサポートに入って欲しい。」と誘われ、お手伝いすることになりました。

JOPTとは何者なのか?(診察)

コピーライターがいきなり言葉を考えることはありません。
言葉を紡ぐ前にまず、ブランドを理解することから始めます。病院で例えるなら「診察」です。患者さんの話を聞かずに薬を処方する医師がいないように、コピーライターもまずは企業やサービスの成り立ちや悩みを丁寧に聞き、そこから解決に必要な言葉を考えます。

JOPTのブランディングプロジェクトも、まずはJOPTのイズムを徹底的に理解するところからスタートしました。イベントディレクターの宮田さん西野さん、イムさんとともに徹底的に議論を交わす日々が続きました。

  • JOPTはどのようにして始まったのか?
  • JOPTは何を目指しているのか?
  • JOPTはポーカーを通じてどんな未来を作りたいのか?

これらの問いを中心に計4回におよぶヒアリングを重ね、出てきたキーワードをマインドマップでグルーピングしていきます。この作業を通じて、JOPTが本当に大切にしているコア(核)が徐々に浮き彫りになっていきました。

ヒアリングを通じて導き出したコンセプトがこちら。

まず、JOPTとは何者なのか?に対する答えとして、
「日本一、ポーカーを楽しみ尽くせる祭典」と定義しました。
言葉で指針が定まると、やるべきことがクリアになります。会場のデザインはどうあるべきか、ディーラーの振る舞いはどうあるべきか、オペレーションは……等、すべてが「それは、日本一ポーカーを楽しみ尽くせる祭典としてふさわしいのか?」と検証できるようになるのです。

しかし、これはあくまで「内向け」の言葉
これを、世の中に届けるための「外向け」の言葉へと翻訳しなければなりません。

当時、日本のポーカーイベントでミッションをしっかり掲げているところはほとんどなかったと記憶しています。どこもやっていないからこそ、JOPTには強い言葉が必要でした。

当時の競合イベントの特色をまとめたり。

JOPTは社会に何を約束するのか?(翻訳)

「医師のように診察し、翻訳家のように言葉にする。」と言うと聞こえはいいですが、そのプロセスは凄まじく泥臭く、毎度困難を極めます。
その苦悩を当時の制作資料から振り返ってみます。(見返すだけで吐きそう)

第一稿:2021/02/13

ふむ。
確かに。
なるほど?
違うな〜〜〜〜〜。

「オリンピックに倣って、ポーカーという言葉を使わずにポーカーのイベントを表せたらめちゃくちゃカッコよくない??」などと考えていたのかもしれません。スベってます。完全に。
「52枚の白熱の祭典」
とかも書いていました。どんだけ「ポーカー」を使いたくなかったんだ。

僕もそう思う。

振り返ってみると、第一稿から「白熱」という言葉には辿り着いていたようです。

余談ですが、私は以前、『エイリアン:コヴェナント』という映画のキャッチコピーを書いたことがあります。内容は「エイリアンの誕生」を描いたもの。 企画段階では映画本編を観ることができず、わずか10ページの資料だけを頼りにコピーを考える日々が続きました。「誕生」というキーワードをヒントにうんうんと唸っていたある夜、タクシーの中でふと「産声」という言葉をひらめきました。
産声は、この世に生まれ落ちて初めて鳴り響く喜ばしい音。 けれど、人類にとってエイリアンの産声は……?と視点を切り替え、喜びと正反対のニュアンスを持つ「絶望」を組み合わせました。
おそらくこれまで結びついたことのない新しい言葉の組み合わせであり、ひらめいた瞬間に正解にたどり着いたと確信しました。

リドリー・スコットが“特別に”許可した日本版ポスター


さて、話をJOPTに戻します。
「白熱」という言葉の発見にも、この時と同じような感覚を覚えていました。JOPTのブランドカラーは、青と白。そして、ポーカーをプレイする中でのヒリつくような戦いは熱気を帯びています。
「白」と「熱」。 この二つが組み合わさった「白熱」という言葉こそ、JOPTにふさわしいのではないか。これをキーワードに、最もしっくりくる言葉の組み合わせを考え始めました。

第二稿:2021/02/17

そうきたか。
絶対違うな〜〜〜〜〜〜〜。

第二稿では、楽しみ尽くす=「エンタメ性」と「競技性」とで成り立っているという仮説のもと、白熱に加えて「熱狂」を足したタグラインをつくっていました。でもしっくりこない感じがすごい。そして「ポーカーと言わずにポーカーイベントを表したい」というエゴも未だに見え隠れする。バカ!!

第三稿:2021/03/18

……そして一ヶ月が経ちました。

そうだよな。
カッコつけずに最初からそうしてほしかった。
これしかないと思った。
「すべての」が大事なんです。


「すべてのポーカーに、白熱を。」

この言葉に行き着いたとき、確信めいたものを感じました。
「これ以上の言葉はない!」「はやく提案したい!」そう思える瞬間は、この仕事のカタルシスそのもの。そしてその後、表記の徹底的な検証を行いました。

  • 全てのポーカーに白熱を。
  • 全てのポーカーに、白熱を。
  • すべてのポーカーに白熱を。
  • すべてのポーカーに、白熱を。
  • すべての、ポーカーに白熱を。

ひらがな、カタカナ、漢字の視覚的なバランス。
読点の位置はどこが一番気持ちいいか。読んだ時の耳心地はどうか。

あらゆる検証を終え、考えの道のりをまとめた文章と共に、イムさんへコピー原稿を送りました。

この返信に至るまで、数え切れないほどの「違う。」がありました。

本当に難産だった。たくさん回り道もした。それでも粘った甲斐があった。
考えて、考えて、それが認められ、広がって、北極星のように皆が目指す言葉になってゆく。これほど嬉しいことはありません。
「あなたが書いた言葉が好きだ。」と言われるときが、コピーライターの醍醐味だと思います。

その後、このタグラインを紐解いた「ステートメント」という宣言文も書き上げ、それを映像化した「ステートメントムービー」も制作しました。

JOPTが目指す世界観が詰まっていますので、ぜひご覧ください。

終わりに

タグラインが生まれるまでのプロセスや苦悩、少しでも伝わったでしょうか。出来上がるものは短い言葉ひとつ。ですがそこには、自分たちは何者で、なにを約束し、なにを目指すのかといった想いがぎゅっと込められているのです。

次のJOPTは、年末年始に開催されます。

「すべてのポーカーに、白熱を。」
この言葉は、会場に集まる皆さんの熱気があって初めて完成します。
是非、会場でお会いしましょう。


明日の記事はgakuが担当します。
MTTの理論理解において信頼できる、数少ない友人の一人です。
2025年のMTT収支は+$90000とのこと。

うるせえ。

著者|Senjyu
1991年インドネシア生まれ。
「言葉にできることは、もっとある。」を信条に掲げ、広告にとどまらない、社会全体にごきげんをもたらす鮮やかな言語表現を追求している。
【受賞歴】
ACC TOKYO CREATIVITY AWARDSシルバー、交通広告グランプリ優秀賞、日経広告賞優秀賞など。

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