ポーカーアドベントカレンダー2025 23日目|Peeeaje(ぴーじぇ)|Exploit 101

はじめに

Peeeajeと申します。現在はエンジニアとして忙しい日々を送っています。

ここ数年はポーカーのプレイも研究もしておらず影が薄すぎますが、かつては研究・プレイ共に楽しむタイプでした。一説にはAmuさんを最初に発掘した人物として存在を囁かれています。

非常に有難いことにポーカーアドベントカレンダーの23日目をお誘いいただいたため、自分の思うExploit入門を紹介しようかなと思います。

アドベントカレンダー全体はこちらを参照ください。

基本原則

最も自分が重要と思う基本原則を2つ紹介します。自分にとって、Exploit = ポーカーのプレイなので、即ちポーカーのプレイの原則と言っても過言では無いでしょう。

ポーカーにおける思考は単純明快なものの組み合わせである

ポーカーにおける思考のひとつひとつは、単純明快なものである必要があります。 具体的な例としては「相手のベットレンジは強いから、沢山降りよう」といったものが挙げられるでしょう。

多くの人は混沌の中に身を置きますが、単純明快な思考を積み重ねる事こそが重要です。混沌の中での思考は、学習という観点においてなんのメリットももたらしません。

ある変数が変わると最適なプレイはどう変化するのか。これらのシンプルなロジックを着実に自分のものにし、実践で可能な限り情報を集め、最適なプレイを行う。これによってのみ再現可能なExploitが行われるのです。

Exploitは「戦略推定」と「戦略構築」の2フェーズに分かれる

Exploitは明確に、相手の戦略を推定する「戦略推定」フェーズと、推定した相手の戦略からこちらの戦略を構築する「戦略構築」フェーズに分かれます。

この区別を明確に行うことがExploitにとって非常に重要です。 戦略推定は容易ではないですし、どこまで行っても絶対に正解は得られません。 一方で、戦略構築は相手の戦略を与えられれば、比較的容易に行えます。(もちろんどういう形で戦略を与えられるかに依りますが)

Exploitの議論が白熱することが多いと思いますが、このように整理するようにしましょう。

  • 戦略推定で相違があるのか?
    • もしそうであれば、推定の正解は出ず、どちらが正しいというのは不毛なので程々で止める
  • 推定した戦略に対する、戦略構築は適切なものか?
    • 戦略推定に相違があっても、それぞれの推定に対して戦略構築は可能なのでみんなで確認する

戦略推定手法

ここでは、「戦略推定」フェーズで用いられる複数の手法を紹介します。

頻度ベース推定

相手が各場面でどうプレイするかの頻度を与えられ、そこから相手の戦略を推定する手法です。MDAや、HUDを用いることができるフィールドでよく用いられるアプローチと言えるでしょう。

具体例

与えられる情報と、そこから推定できる相手の戦略。また、その推定の確度を上げるため、追加の情報を集めるという流れを軽く紹介します。

  • 情報
    • 相手がprobeに対して降りすぎている
  • 推定1
    • ディフェンスしないといけないハンドを降りすぎている
    • 降りたハンドは見られないので、他の情報によって確度は上げにくい
  • 推定2
    • flopでのcheckレンジが弱すぎる = betレンジが強すぎる
    • 2nd barrel頻度が高いと、より裏付けられる
    • checkレンジが弱くなる傾向は他のラインでも同様に出やすいので、それらの確認を行う
  • 推定3
    • preflopのレンジが弱すぎる
    • preflopのstatsを確認することで確度を高められる

戦略ベース推定

特定の場面でのGTO戦略を把握し、そこから乖離しやすいポイントを元に相手の戦略推定を行う手法です。 GTOの学習を、Exploitをゴールとして行う場合に達成されやすいアプローチと思います。

具体例

  • 情報
    • この場面のGTOでは、riverでdrawが完成したときのブラフのために、完全なゴミ手でturn betする必要がある
  • 推定
    • この相手のレベル感では、それが出来ないだろう
    • turn betは僅かに強くなる
    • drawが完成したriverではブラフが足りなくなる

Showdownベース推定

Showdownに行ったハンドを元に戦略を推定する手法です。決めつけすぎのように感じられやすいですが、実践ではこれを活用することで大きなevを獲得できる場合も多いと考えます。

とはいえ、やりすぎるとメタゲームと呼ばれる疑心暗鬼の森に踏み込むことになるので、付き合い方は大事かもしれません。

具体例

  • 情報
    • GTOではブロッカーの関係で絶対に使わないブラフを使ってきた
  • 推定
    • ブロッカーを意識しないプレイスタイル
    • GTOの学習をあまり行っていない
    • ブラフ頻度が適正よりも高い

戦略構築

上では、特定の情報から相手の戦略を推定する様々な手法について軽く説明しました。 ここからは推定した相手の戦略を元に、自戦略を構築する手法について考察していきます。

あくまで様々な手法がある中で、自分が用いる思考のフレームワークを紹介するという立ち位置で解釈してもらえると良いかと思います。 完全に自流と思うので、PJ式Exploitとでも適当に呼んでおいてください。

フレームワークの基礎

このフレームワークでは、相手と自分のレンジをそれぞれグループに分割して考えます。

分け方は場面によって異なりますし、細かく分けることによってより効果的なExploit戦略を構築できることも多いと思います。

自分がよく用いる分割は「strong・marginal・air」という分割です。その他にも、場合によってairを「draw・trash」に分けたり、drawを細かく分けたりします。

フレームワークの流れ

フレームワークの基礎的な流れを紹介します。

  1. 相手のGTOからの乖離点を列挙する
  2. 各乖離に対する、Exploit戦略を検討する
    • その際、相手がその乖離以外は完璧にプレイしていると仮定する
  3. 検討した結果を統合し、最終的な戦略を構築する

相手のGTOからの乖離点を列挙する

最初のステップでは、相手のGTOからの乖離点を列挙します。 ここで重要なのは、それぞれの乖離点をシンプルかつ明確にすることです。

指針としては、上で示した分割の考えを用いて、このようなフォーマットで表すと最初は良いでしょう。 「Xの場面において、グループアクションしすぎている」

例としては「flop CBの場面において、marginalでbetしすぎている」という風になるでしょう。

知覚した全ての乖離について、このようにシンプルに整理を行いましょう。

各乖離に対する、Exploit戦略を検討する

次に、それぞれの乖離についてExploit戦略を検討していきます。 重要なのは「具体的にどういう戦略にするか」という答えを出そうとせず、「何がどの方向にズレるか」について整理することです。

前のステップで乖離を整理することによって、このステップの複雑性が大きく減少します。

「flop CBの場面において、marginalでbetしすぎている」を例として挙げると、ここから導かれるExploitとしては以下のようなものが考えられるでしょう

  • 相手のCBが強くなるので、foldの下限を上げる
  • 相手のcheckレンジにmarginalが少なくなるので、checkされたらairをよりbetする
  • CBに対してstrongでよりXRする

相手の乖離をシンプルに整理してもこのステップが上手く行えない場合については、この記事ではカバーしないので周りの賢い人に助けてもらってください。

検討した結果を統合し、最終的な戦略を構築する

それぞれの乖離について検討が終わったならば、それらの統合に移ります。

このステップは非常に直観的な部分が多く、最終的に構築された戦略が正しいかも多くの場合は担保することができないです。 シンプルに検討したものを材料に、よく考えましょう。

統合が簡単なパターンとして、検討した結果の多くが同じ結論を導いている場合があります。複数の乖離が「airでflop CBを増やすべき」と結論づけるのであれば、最終的な戦略もそのようにすれば良いでしょう。 しかし、多くの場合ではそれほどシンプルではありません。「airでflop CBを増やすべき」と述べる材料が2つ、「airでflop CBを減らすべき」と述べる材料が1つのように、相異なる結論を持つことが殆どです。これについては、2対1だから増やせばいいというものでも無いです。

結論は出さないといけないので、よく考えて、他の人と検討をしたり、勝っている人のプレイや思考と擦り合わせて精度を上げていくしかないでしょう。

まとめ

この記事は自分がポーカー界隈からほぼ引退しており、そこまで評判を気にする必要がないこと、戦略の公開を行うことで生じる不都合がほとんど存在しないことなどの理由によって執筆されました。

記事を書くために、自分のプレイ中の思考をある程度構造化したものです。あくまで、実際のプレイ中の思考は構造化されている訳ではなく、記事で述べられていない多くのニュアンスが存在していることに注意してください。

最後に、改めてのメッセージですが、ポーカーは本来シンプルな思考を積み重ねることによって、再現性をもって複雑性に対処できるようになると自分は強く信じています。

直感と呼ばれる概念は否定しないですし、むしろ学習を愚直に行うプレイヤーにはそういった要素を軽視しすぎな人も多いと思っています。 しかし、直感とは「多くの適切な学習に基づく、無意識によって下される判断」であると自分は考えています。あくまで、多くの適切な学習が基礎となるものです。

この記事を参考にしてもしなくても良いですが、シンプルにポーカーを捉え、シンプルに学習する。これは大事にして損はないかと思います。

明日の担当はtakayukiさんです。非常にロジカルなポストをXでされている方で、記事を個人的にも非常に楽しみにしています。読むのが楽しみですね。

著者|Peeeaje(ぴーじぇ)
ポーカー引退済みです。

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