連載ベットサイズ 第2回 (2/2)|先のストリートとスタックサイズの影響
この記事の目次
前回のおさらい
前回は相手プレイヤーのレンジの非弾力性を利用してベットサイズを調整することについて解説しました。おさらいしましょう。前回の例では、$10〜$20のCベットに対して同じ額のように振る舞う(ベットサイズが$10〜$20の間のいくらであっても、フロップでハンドができればコールしできなければフォールドする)相手を想定しました。この場合、強いハンドを持っているときは$20に近い額をベットし、弱いハンドのときは$10に近い額をベットするという戦略をとることで、長期的にはバリューハンドのときにたくさんお金を稼ぎ、ブラフのときは損失を小さくできるということを学びました。
クィ・グウェンは2016年のWSOPのメインイベントでこの戦略を使いました。クィは相手が小さいベットにさえもフォールドしすぎなことを突き止め、フロップをミスしたときは毎回できる限り小さいサイズのCBを打ちました。そうすることで、相手がフロップで強いハンドを引いてしまったときに損失を最小限に抑えることができたのです(さらに、ポットを小さく保つことで、セカンドバレルを打つ場合のコストも小さくすることができました)。
ファイナルテーブルで実際にプレイされたハンド#171を見てみましょう(このハンドは彼と私の共著『From Vietnam to Vegas [D&B Publishing 日本語未訳]』で詳しく解説しています)。3人全員がフロップに行き、ポットには23,700,000点のチップがありました。クィはフロップをミスしてしまいましたが、9,900,000点(40%ポット)のCBを打ちました。このハンドでは相手のプレイヤーがなんと2人ともセットを持っていたのでクィのブラフCBは失敗に終わりました(この歴史的なハンドは先に紹介した拙著の173ページで紹介してますのでぜひご覧ください)。このハンドではクィのCBは成功しませんでしたが、この例の重要なポイントは、9,900,000点というベットサイズは相手がフロップをミスしたときにポットを獲るには十分な額であるということです。
先のストリートを考える
しかし、ときには先のストリートのことも考慮すべきときもあります。例えばフロップでワンペアを持っているけどポットを大きくしたくないような状況です。アグレッシブな相手が後のストリートでオールインしてくると困ったことになりますので、ここはベットサイズを小さめにしてポットコントロールしつつ、ハンドをプロテクトするのが良いでしょう。
スタックサイズがベットサイズに与える影響
そして多くの場合、スタックがいくら残っているのかもベットサイズに影響します。自分も相手も残りのスタックが$500だとします。そしてスタックサイズを考慮に入れなければ、この特定の状況での最適なベットサイズが$150だとしましょう。しかし残念ながら$150というのは、相手がちょうどフォールドエクイティ目当てにブラフオールインを返しやすいサイズです。
このスポットでは、不本意ながら$250くらいのベットをして、こちらがフォールドする気がないということを相手に主張するべきでしょう(それでも相手がレイズオールインをしてきたら、フォールドしても良いでしょう。こちらがそこまで主張しているのにオールインをしてくるということは、相手のオールインはブラフではないということでしょうから)。
ドローのベットサイズには特に注意が必要な理由
ドローをプレイするときは、特にベットサイズに気をつけなくてはなりません。オールインになるまであと何回ベットが発生するかを事前に把握しておくべきです。なぜなら相手にオールインさせるのではなく、フォールドエクイティがある状態でこちらからオールインしたいからです。
例えばフラッシュとガットショットのコンボドローを持っているとします。ポットは$20でエフェクティブスタックは$100だとします。このスポットでのベットは$10程度が良いでしょう。すると相手のレイズ額は$25〜30になり、こちらは$100のリレイズオールインを返せることになり相手に大きなプレッシャーを与えることができます。
もしもここで$20をベットしてしまったら、相手のレイズ額は$50〜60になり、こちらの$100のオールインにはフォールドエクイティがなくなってしまいます(たしかにこちらのコンボドローにはかなりのエクイティがあり、フォールドエクイティがなくても最悪の状況にはなりません。しかし、ドローを完成させずにその場でポットを獲れた方がはるかに利益的です)。
まとめ
ベットサイズについて本を丸々1冊書くこともできますが、今回の連載で皆さんにお伝えしたい重要なポイントは以上です。まとめると、次のポイントをしっかり守っていただければ適切なベットサイズでプレイできるはずです!
- 目的志向で考える
- 相手プレイヤーの傾向を見極める
- スタックサイズに注意する
- 先のストリートのことを事前に想定しておく
ベットパターンをエクスプロイトされる危険
最後にもう1つ言っておかなくてはならないことがあります。ベットパターンを固定するとエクスプロイトされる可能性があるということです。エアーのときは1/2ポットのCBを打ち、強ハンドでは3/4ポットのCBを打っているということに相手が気づいてしまったら簡単にエクスプロイトされてしまうでしょう。
ここで重要なのは、相手は気づくのか?ということです。ほとんどのプレイヤーは気づかないでしょう。スマホで友達とメッセージをやり取りしていたり、ポーカールームのTVで流れているバスケットボールの試合を観ていたり、食べ物をオーダーしたりしながらポーカーをしているのですから。もし心配なら今度試してみてください。しばらく離席して、テーブルに戻ったときに前のハンドで何が起きたのか隣のプレイヤーに聞いてみましょう。ハンドで何が起きたのかをきちんと追いかけてるでしょうか?ショウダウンしたプレイヤー本人に聞いてみてもいいかもしれません。ほとんどのプレイヤーは自分が参加していないハンドには注意を向けないものです。
ですから、ベットパターンを相手に見抜かれてしまうということについてはそれほど心配しなくて良いでしょう。$5/10以上をプレイするようになったら徐々に気をつけていくべきだと思います。それより低いレートでは、直前のハンドでショウダウンされたカードすら思えていないのですから、1/2ポットサイズのベットと3/4ポットサイズのベットを観察してハンドと紐づけて追いかけてるなんてことはないでしょう。
著者:スティーブ・ブレイ
翻訳元の記事:Bet Sizing, Part 2